北海道新聞で月に1度掲載されるエッセイ、「いのちのメッセージ」。
生老病死を見つめるあたたかな眼差しと言葉で紡がれた、その文章のファンです。
書いているのは、奈井江町にある方波見(かたばみ)医院の医師、方波見康雄先生。
故郷の奈井江町で、お父さんが開業した方波見医院を32歳のときに継いでから、院長として地域医療の先駆的な取り組みをいくつも実践。2006年に院長の職をお子さんに譲ってから現在も、週に1回は外来診療を担当されています。
エッセイから滲み出る誠実な人柄に敬服していたところ、札幌でご本人の講演を聞ける機会があることを知り、参加してきました。テーマは、「いのち・人間・魂のお話~地域医療60年の経験から」。
先生は、2018年時点で92歳!以前に大病を患って重い手術や治療を経ながらも、講演で実際に目にする姿はお元気そうで、お話も予定時間からオーバーするほどたっぷり聞かせてくれました。
理屈だけに偏らない、人間性のある医療。
いのち(身体)の声や音に耳を傾け、何気ない立ち居振る舞いに自然と目を向けて、一人一人の状態をキャッチする謙虚さ・感性・想像力を磨くこと。
肩書きはいらない、“一介の” 開業医、“一介の” 町医者として、地域の人々と向き合い、寄り添って、「まるごとの人間」を見ること。
充分に話を聞くこと。沈黙にも耳を澄ますこと。最期まで診ること。
絶えず新たな知識を得て更新すること。
これらはポイントごとのわたしの要約であって、実際のお話は豊富な経験からのエピソードを交えたもっともっと魅力的なものでした。内容は哲学的でもあり、こちらの感性が試されるようでした。同時に、先生の自然体の語りを聞いていると、いのち・人間への包容力に癒されてきます。
途中からはメモをやめて聞き入りました。終了後、帰り道では周りから、素晴らしいね、こんなお医者様が身近にいたら凄くいいね、というしみじみした声が。
セラピストとしてもこれからの糧としたい視点をたくさん得ました。
講演会の主催・会場は、藤女子大学です。
「未来共創フォーラム 2018」という、地域社会・未来へのメッセージ発信プログラムの今回は第1回。
年内に数度、異なるテーマと講師の方で展開される予定で、藤女子大学の学生以外も聴講することが可能です。
興味のある回に単発の参加もでき、費用は無料。
ちょうどこの時期、構内には、藤の花が綺麗に咲いていました。
何事も一期一会。改めて考えさせられる1日でした。